仏像修理

工房のご近所のお寺から運び込まれた少し大柄な大人の体躯といった大きさの
大日如来像。 その昔、「 海から引き上げられた 」 との言い伝えを持ち、地区の人々に
大切にされていましたが、頭頂部は大きく欠け、その上に直接、髷が差し込まれ、全体は
ちょっと触れただけで、塗料がパラパラと剥がれ落ちるなど傷みが大変にひどく、
修理のご相談を受けた時には上腕と肘がはずれ落ちた状態となっていました。
当初はバラバラになった腕を直すだけならと引き受けたのですが、檀家の方々と 検討を重ねるうち、全体をできるだけ修復するということになりました。
当初はバラバラになった腕を直すだけならと引き受けたのですが、檀家の方々と 検討を重ねるうち、全体をできるだけ修復するということになりました。
大きく欠けた頭頂部をヒノキで整形、全身の古い塗装を研き落とす。
欠損した指を新たに作り、印を結ぶ。

古い塗料を研ぎ落とすと、良質の杉材で端正に彫られた、おだやかな気品にあふれた顔立ちが現れました。
対照的に、胴のつくりや頭部の飾りなどは意外なほど大雑把で、細部に頓着しない作者の気質がうかがえます。
膝は別の材で新たに作り直されていましたが、それでも、かなり古い時代のものと思われます。
但馬の海岸では大陸や朝鮮半島からの漂着物は珍しいものではなく、この大日如来も、言い伝えを裏付ける
かのように各部の損傷が激しく、特に、腰まわりなどは一部スポンジ化した状態となっていて、長い時間、
海原を漂ってたどり着いたのであろうと実感できるものでした。
髷のホゾ穴には、前回修理された時のものと思われる古い寛永通宝が埋められていて、
平成の50円硬貨と共に埋め戻されましたが、なかば朽ちかけながらも 幾度となく修理を施されてきたその姿は、
この仏像の生い立ちと歴史を如実に物語っているようでした。
素地が大変脆くなっていて、漆のような強い塗料では素地が負けて、またすぐ剥がれる可能性が あったので、着色には土と朱と墨だけを用いて、素地の見える仕上げとしました。
